地球が丸いってほんとうですか?

〜 The truth lies within survey 〜

#3 メートル法のそもそも

Q3. 

Q&A2で地球の一周の大きさは4万kmだという説明がありましたが、ほんとうにぴったり4万kmで、端数はないのですか?もし、そうなら不思議なことですね。

 A2.

 
はい、地球一周の長さは、「ほとんどぴったり」4万kmです。「ほとんどぴったり」って変な言葉ですね。それはそもそも1mというのが、地球一周の長さが4万kmぴったりになるように決められた長さの単位だったからです。
 
 

メートル原器(産業技術総合研究所提供)

図3-1  メートルという単位が最初に作られたのは、1795年、フランスでのことです。それ以前は、フランス国内でも地方によって長さの単位が違っていました。そこで、新しい長さの単位を作ることになり、「赤道から北極までの距離を、1万kmとする」と決めたのです。つまり、赤道から北極までの距離の1000万分の1が1mと決められました。だから地球一周の長さが4万kmになるのは当然ですよね。

 
でも、実際に赤道から北極までの距離を測ることはできませんでしたから、すぐには1mってどれくらいの長さかわかりません。そこで、フランスのダンケルクとその真南にあるスペインのバルセロナとの間の距離を測り、その測量結果をもとにして、1mが決められました。
 
長さの単位がばらばらでだったのはフランス国内だけではなく、国際的にも各国それぞれ固有の長さの単位が使われていました。しかし、それでは不便です。そこで国際的に共通の長さの単位を制定しようということになり、それには私たちの地球の大きさを基準に決めたメートルを使おうということになったわけです。
 
1875年、世界共通の計量単位制度を目指したメートル条約が締結されました。日本は1885(明治18)年にこの条約に加盟しています。1889年には第1回国際度量衡総会が開かれ、白金とイリジウムの合金でメートル原器がつくられることになりました。もちろん、「原器」というからには世界中にひとつしかなく。これはパリにある国際度量衡局BIPM (Bureau International des Poids et Measures)に保管し、複製した副原器をたくさんつくって各国が保管します。日本にも1890年に到着し、1903年には中央度量衡器検定所(現在の産業技術総合研究所計測標準研究部門)で保管されることになりました。
 
しかし、メートル原器は、破損や変形などによって長さが変わる可能性があります。実際、膨張などの影響で、原器自体が1万分の1mmの変化を起こしていることも、1950年代に判明したようです。そのため、メートル原器が作られた当初から、より普遍的な長さの基準を探す研究がなされてきました。そのなかで、物理化学の一分野である分光学の発展により、光の波長が長さの基準になりうることがわかり、光の波長を1mの基準にしようという提案がなされました。そして、それまでの測定結果をもとに、他の原子と化合しにくい質量数86 のKr(クリプトン)が出す橙色の光の、真空中における波長を1650763.73倍したものを1mとすることになりました。1650763.73倍なんて半端な数になったのは、半端な数になったのは、それまでのメートル原器による定義になるべく近くなるように決めたからです。この定義は、1960年10月の国際度量衡総会で採用され、日本では、1961年7月1日に政令で定められています。
 
その後、原子時計を用いる時間測定のほうが、光波を利用する長さ測定より高い測定精度を持っていることが分かり、1986年10月の国際度量衡総会において、
「1mは、299792458分の1秒の間に光が真空中を伝わる長さとする」
という決議が成立しました。現在これが1mの定義になっています。
 
このように、1mの定義は、その時々の科学技術水準によりなにがもっとも正確に長さを定義できるかによって変わってきていますが、もともとの1mの定義は、北極から赤道までの距離の1000万分の1だったのです。だから、地球一周の距離が4万kmになるのは当然のことです。1983年8月にドイツのハンブルグで開かれた国際測地学協会の総会で、最新の測地定数として「測地基準系1980」の改訂版が定められていますが、それによると赤道から極までの距離は10001.96kmとなっています。端数の1.96kmは1795年当時の測量精度を反映しているのですね。
 
メートルという単位は、もともとフランスで決められた単位で、その後もフランスが中心となってメートルの国際化が進められました。そのため、フランスに対して強い対抗意識を持つイギリスやアメリカでは、なかなかメートルの導入が進みませんでした。だからいまだにマイル、ヤード、フィート、インチといった長さの単位が一般生活で用いられています。一方、日本では、昔は里、町、間、尺、寸という単位が使われていたのですが、早い時代からメートルの導入が進みました。これを読んでいる皆さんもこのような日本の昔からの単位にはなじみがなくなってきていますよね。これもすぐ国際化に飛びつく日本人の特性でしょうか。