補論

ジオイドと高さの基本概念

NIMA/NASA の共同開発による世界ジオイド EGM96 は、今までと同じような意味での平均海水面と一致するジオイドではなく、準ジオイド( quasai-geoid )というものである。この概念は高さというものの定義と関係しているのでまずこのことを述べる。

 正標高というのは、 をある地点でのジオイドよりの重力ポテンシャルとすれば

で定義される。ここに は地表のある地点よりジオイドまでの間の重力の平均値である。正規高は

で定義される。ここに は地表のある地点よりジオイドまでの間の正規重力の平均値である。楕円体高

で正標高と関係づけられ、ここではジオイドの高さである。 この関係を使えば、楕円体高と正標高が分かればジオイドが分かる。最近では、正標高の分かっている水準点で GPS によって楕円体高を出し、これによりジオイドを求め得る。これをGPS/水準ジオイドという。これは 1点での精度は良いが、分布が限られる。 今までは重力の分布から出した重力ジオイドが普通で、これは精度は劣るが、分布はよい。 それで重力ジオイドをGPS/水準ジオイドで補正して1cmジオイドに達しようと言うのが現在の方法である。

 一方、楕円体高とジオイドが分かれば正標高が分かる。 それで正確なジオイドが分かればGPSによる楕円体高から正標高が分かり、苦労の多い水準測量の替わりとなる。 これが高さを求める現代の方法である。

 さらに、楕円体高

で正規高と関係づけられ、ここで高度異常と言う。 また、準ジオイドの高さと言うこともある。 この関係を使えば楕円体高と正規高とが分かれば準ジオイドが分かる。 このように正規高と準ジオイドによって測地学を体系づける理論は1945 年旧ソ連の測地学者M.S.モロデンスキーによって完成されている。