| 1.はじめに | 
						
						
							 今日、米国においては古典的な水準測量にかわりGPSによる新しい高さ決定を全面的に採用する時代となった。水準測量にかわるGPSによる高さ決定はGPSの出現とともに考えられていたことではあるが、ジオイドの精度がGPS測量の精度に見合う状況ではなく、実用には至っていなかった。しかし、最近では2点間の楕円体高の差の決定精度も1〜2cmとなり、またジオイド高の差の決定もそれに見合う精度となってきたので、水準測量はGPSによる高さ決定へと置き換えられるようになったのである。すなわちGeoid96ができ(現在ではGeoid99も完成)、GPSによる正標高決定が古典的水準測量に代わったのである。 
								 このような機運は米国測地局(National Geodetic Survey,NGS)によって推進されている。 
								 
								以下に 
								D.B.Zilkoski,NGSユGPS Height Modernization Activities,ION GPSユ99,1999,943-953. 
								により米国内で各分野でいかにGPS正標高決定が応用されているか、解説する。 | 
						
						
							| 2.高さ決定の基本式 | 
						
						
							 GPSによる高さ決定について基本的なことは、 
								dh:2点間の楕円体高の差 
								dH: 2点間の正標高の差 
								dN: 2点間のジオイド高の差 
								とすると 
								dH=dh−dN 
								であって、現在ではdhは±2cm、dNは距離20km以下で±1cm、距離50kmまでで±2〜3cmという精度で決定できるということである。Geoid96が目下の所最新のNGSのジオイドモデルだが、Geoid99も1999会計年度中には完成する予定である。 
								米国測地局のGPS楕円体高決定についてはガイドラインが出来ていて、 
								これが掲載されているWeb siteは 
								http://www.ngs.noaa.gov/OUBS_LIB/NGS-58.html 
								である。またGeoid96のWeb siteは 
								http://www.ngs.noaa.gov/GEOID/geoid.html 
								である。 | 
						
						
							| 3.各地での実例 | 
						
						
							 テキサス州ヒューストン・ガルベストン地区での地盤沈下自動GPS監視システム 
								
								水準測量は完全だが、お金のかかる測量である。昔の水準測量の一部の資金で、GPSによる地盤沈下の監視ができる。ヒューストン・ガルベストン地区では不動点がうまく取れない。固定点でGPS連続観測し、一方トレラーで移動してGPS観測を実施する。データは30秒ごとに取得し、24時間連続観測して精度は1cmを確保する。4年間このシステムで観測していて、今までの結果では、1年に4〜5cmの沈下が認められている。 
								 
								
								チエスピークと米国東北海岸での垂直変動と局所海水面の監視 
								
								このチエスピーク地区の海面上昇は世界標準の2倍である。NGSは海面変動か、地殻変動かを調べるのにGPSを使った。これで絶対変動が分かる。こうしてGPSは世界気候変動にも役に立つ。これについてはつぎのWeb siteを見よ。 
								http://www.grdl.noaa.gov/GRD/GPS/Projects/CB/bay.html 
								 
								
								GPSを使った海洋船の移動と3D-高さの位置決定 
								
								DGPDも高精度となってきている。それで海洋船の移動の監視も高精度で可能である。それと船のローリング・ピッチング・ヘッディングの3D高さ決定も可能である。応用例は、カルフォルニアのオークランドにみられる。この場合の目標精度は10cmである。5台の受信機を使い1台はYaber Buema Islandのピア-に基点としておき、2台は船尾に、2台は船首に置いた。こういうことが出来ると水位の変化の観測にも使える。これについてはつぎのWeb siteを見よ。 
								http://www.grdl.noaa.gov/initiatives/heightMod/Buttonwood/ 
								 
								
								GPSを使ったブイ 
								
								PORT(Physical Oceanograhic Real-time System)という計画がある。このシステムは港のなかの海流、水位、その他の物理的状況を測るものである。これについてはつぎのWeb siteを見よ。 
								http://www.grdl.noaa.gov/programs/coop.html 
								航海者は港に入る前にPORTを見ることが出来る。しかし、実測の水位は今の所特定の所だけで、他はモデルにもとずいたものである。ブイにGPSをつんで水位を測ることが出来ればモデルの数値を修正できる。これはDGPSで実現できる。水位の測定の精度は2〜3cmである。これは検潮儀の結果とよく一致していた。 
								 
								
								橋のGPS測位 
								
								チヤーレストンの二つの橋で垂直方向の許容範囲を測定した。これは橋の下を通る海洋船の垂直方向の安全性を保証するものであった。この目的をGPS、水準測量、三角測高の測地学的な観測の結合で実現できた。ふたつの橋に三つのアンテナをつけ、4番目のアンテナは基点においた。 
								 
								
								航空機のGPS測位 
								
								NGSの写真測量の役割の一つは海図に海岸線をしっかりと描くことである。NGSは航空機にGPSをつんで、カメラ露出の位置を決めている。これで空中三角に必要な地上点を少なくすることが出来る。また航空機を正確に飛ばすこともできる。高さについても数値モデルを構築することが出来るようになった。この精度は1〜3mである。この数値モデルで洪水リスクの陸水モデル構築に役立てることが出来る。 
								NGSのリモートセンシングについてはつぎのWeb siteを見よ。 
								http://www.grdl.noaa.gov/INFO/OnePagess/shoreline_page.html 
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							| 4.まとめ | 
						
						
							 GPSによる高さ決定は、古典的な水準測量に代わる高さ決定を推進する国家宇宙基準点システムの垂直決定を推進するものである。NGSは議会により国家高さシステムの現代化の命を承けたが、これはGPSが国家高さシステムの現代化に役立つことが言われている。管理予算局は議会に報告を送ることを承認した。NGSは議会の採決の後各方面に公表する。 
								 これができれば画期的な高さ決定は地上の移動体の管理や監視に役立ち、海上の活動にも役立つ。NGSは、船のパイロットや沿岸警備隊や沈下監視委員や港湾局などの測地の新しい利用者に推進していくことも企画している。 |