027.オーストラリアの新測地系GDA94について
2001年9月


1.はじめに
 2001年6月測量法が改正され、いよいよ日本も測地系が局所測地系より世界測地系へと更新されることとなった。これと関連し、世界の各国がどのように新測地系を構築していったかは興味深い。本稿では、文献
Jim Steed and Geoff Luton:WGS-84 and the Geocentric Dtum of Australia,Proc.ION GPS 2000,432-437.
などによりながら、オーストラリアの新測地系GDA94制定の経過を紹介する。

 WGS-84は米国の国防局によって導入されたものであるが、これは始めはドップラー観測にもとずいて構築されたものであった。後にGPS観測もその構築に利用され、大きな変化としては1994年と1997年とに更新された。今は国際地球回転事業IERSの維持するITRFとほとんど一致するようになっている。
 1966年にオーストラリアの測地原点AGDが設置された。これは1984年に更新されたが、なおGPSで利用するWGS-84と200mの差があった。
 米国国防局はAGD66とAGD84とをWGS-84に変換するモロデンスキー変換パラメーターを決めたが、これはとても5m以上の精度にはいっていなかった。1992年にGPSと合致する原点を導入するために、オーストラリアは国際GPSプロジェクト(Epoch92)に参加し、このときに8点で観測が実施された。この8点をオーストラリアの基準点AFNという。
 1992年から1994年にかけて78の測地点で半日のGPS観測が実施された。これらの観測点の間隔は500kmである。以上がオーストラリアの国家網ANNを構成している。これらをどのようにして新しいITRFとマッチするようにしていったかを論ずる。
2.新しいオーストラリアの測地系
 AFNやANNのデータを利用して、ITRF92に適合するように位置を数cmの精度をもつようにきめる事ができる。epochは1994.0である。これが1994年のオーストラリア測地原点の基礎である。1997年にAGD66やAGD84をGDA94へと変換するモロデンスキー変換パラメーターを決定した。相似変換の場合のパラメーターも決定した。
3.GDA94とWGS84の比較
 WGS84は2回更新されている。G730はITRF91と10cmの差である。G873はITRF94と10cmの差である。
 GDA94はWGS84と1m以内で一致することが望ましい。これを確かめるために、19の点の1993年9月4日の24時間GPS観測のデータがNIMAに送られた。計算の結果はこれは確保されていることが分かった。水平は1m以内だが、高さはこれより悪い。
4.GDA94とWGS84(G873)の比較
 オーストラリア測量地図委員会はGDA94はWGS84としても使えなくてはならないことを決定した。GDA94とWGS84(G873)とが一致することが望ましい。ところでITRFもWGS84もプレートテクトニクスによる位置変化(年に7cmにものぼることがある)を認めているのであるが、GDA94は1994年1月1日に位置が固定されている。
 GPSの精度は2000年5月のSAの解除やITRFがon-lineで利用できるようになってGDA94とWGS84との関係をつけることがますます大切となってきた。1998年10月22日〜24日のデータは8点(ARGN)につきNIMAからもらった。それでGASPというソフトを使い8点のWGS84の値を出した。これとGDA94とを比較した。変換パラメーターも出した。いまだ大きい差があった。
5.WGS84とITRFとの比較
 WGS84(G873)とITRFとは数10cmで等しいことをオーストラリアのデータで確かめる。NIMA計算の8点のWGS84位置をITRFのいろいろなバージョンと比較した。
 WGS84(G873)とITRF97とを1998.81で比較した。水平は0.2cm以内、高さはこれより少し悪い。7パラメーターも決定した。2000.47という元期でもやってみた。
6.まとめ
 WGS84(G873)とITRFとは数10cmで等しい。位置を比較する時に観測した時期が大切である。ITRF位置を計算するだけでなく、これをGDA94に直すon-lineのGPS Position Serviceが導入されている。
http://www.auslig.gov.au/geodesy/sgc/wwwgps/wwwgps.htm
 しかし、プレートの運動やより精密な位置の将来の利用を考えると、座標の位置とは独立に、固定した元期で定義された静止系のGDA94でよいか問題をなげかけている。