1.はじめに |
今までのリアルタイム・キネマティックスRTKのGPSは、ローカルスケールにとどまっていたが、10cmレベルの測位を可能にしてきた。広域的には、米国連邦航空局FAAの広域補強システムWAASや米国沿岸警備局のCORSなどは1mレベルの精度であった。今日までグローバルスケールではリアルタイム測位は考えられてこなかった。しかしながら、最近、新しく開発された米国航空宇宙局NASAのグローバル・ディファレンシャルGPS(Global Differential GPS,GDGPS)は、垂直成分で20cm、水平成分で10cmの精度をもつ汎地球的なディファレンシャルGPSである、といわれている。
本稿では、文献
R.J.Mullerschoen,Y.E.Bar-sener,W.I.Bertiger,D.A.Stowers:NASAユs Global DGPS for high precesion users,GPS World,Jan.2001,14-20.
R.J.Mullerschoen,W.I.Bertiger,M.F.losegh:Results of an Internet-based dual-frequency Global Differential GPS System,Proc.IAIN,World Cong.,San Diego,CA,June 2000
などによりながらGDGPSを紹介する。 |
2.グローバル・ディファレンシャルGPSの役割 |
GDGPSはNASAのために、1995年以来ジェット推進研究所JPLによって開発された。これは、1996年には連邦航空局FAAによって広域補強システムWAASの原型として採用された。GDGPSは地球上どこでも20cm以上の精度でリアルタイム測位を可能にすると評価されたからである。
これは航空機の航行や精密農業・レスキュー活動にいたるまで応用が広い。航空機の場合には、30cmの精度の必要な自動着陸の実現にも役に立つ。
GDGPSは自然災害のモニターリングと災害への対応にも役に立つ。米国宇宙局NASAは地殻変動の測定や火山活動・地すべりなどの調査にも利用している。開口合成レーダーInSARでは同じフライトパスに沿う飛行が大切である。この条件の確保にも役に立つ。 |
3.グローバル・ディファレンシャルGPSのシステム構築 |
GDGPSは、二周波の電波を観測し即時にジェット推進研究所JPLへ送り返すGPS受信機をもっている約20の全地球的観測網を前提にしている。これにより衛星のGPS暦と時計誤差の補正が可能である。この観測網がGPSデータをリアルタイムに提供できれば、ディファレンシャル補正が可能で、ユーザーにリアルタイムでサービスを提供できる。 |
4.データ解析と開発したソフト |
基準網。
NASAのGPS網は約60点の二周波受信機をもつ観測点を含んでいる。この観測結果をbach down loadではなくて、インターネットでリアルタイムで公開するように改善した。このリアルタイムで使う点には原子時計が設置されている。
データ解析
任意の遠い点でのLinax PC上で走るDaemonがGPSデータの取得を可能とする。Daemonとはコンピューターソフトの名前である。
ソフトウェア
C言語で書かれたソフトウェアパッケージIGDGを作った。これにより任意のユーザーに測位と軌道決定とを可能に出来る。詳しくはWeb site http://www.igscb.jpl.nasa.govを見よ。 |
5.グローバル・ディファレンシャルGPSの実験結果 |
結果
JPLでは1999年12月より利用している。各点でのデータの95%以上が3秒以内にセンターに戻ってくる。単独測位を1Hzで繰り返してみて、垂直で19cm、東西・南北で10cmの精度で決定できた。詳しくはhttp://gypsy. jpl.nasa.gov/idgdをみよ。 |
6.グローバル・ディファレンシャルGPSの将来 |
今後ともにGDGPSの進歩があり得る。リアルタイム網は増設して信頼度と精度の向上を図る。2001年中にリアルタイムの網の点を25点とする。インターネットテールも登録されたユーザーへの補正の提供を制限している。もっとどこでもいつでも提供できるようにしたい。受信機も改良してエンドユーザーに便利にしたい。 |