1.はじめに |
最近、中国大陸の全域をカバーするGPS観測が整備され、過去数年にわたる観測成果をもとにして、中国大陸内の地殻水平変動の様相があきらかになってきた。いまのところ観測点の密度は必ずしも高くはないが、大陸にわたる規模での広域的な地殻変動の場を明らかにしているのは、中国のみである。その最新の結果は、昨年夏のブタペストにおけるIAG学術総会にもいくつかの中国の研究グル−プによって発表された。ここでは文献
Y.Fu,W.Zhu,X.Wang,W.Duan,X.Wu,W.Jiao:Present-day crustal deformation in China relative to ITRF97 kinematic plate model,Journal of Geodesy,76(2002), 216-225.
によりながらITRF97に立脚した中国大陸全域の速度場の状況とその結果の地質学的な解釈について紹介する。 |
2.GPS観測網の整備 |
現在では、GPSやVLBI,SLRなどによって2mmの精度で短期間の地殻変動が求められるようになった。中国では1992年いらい、二つのGPSキャンペ−ンが行なわれてきた。一つは、1991年10月にPandengという観測計画で始まり、そのご現代中国の地殻変動と地球ダイナミクス研究(Investigation on Present Crustal Motion and Geodynamics,略称CMMN)へと発展した研究計画である。この計画は22点のGPS点からなり、基線の平均長は、1000kmである。GPS観測は1992年,1994年,1996年,1999年に実施された。求められた水平地殻変動の速度場の精度は1.5mm/年である。
1998年8月には、56点かになる基本GPS点と25点の基準GPS点とが設置されて、中国地殻変動観測網(Crustal Movement Observation Network of China,略称CMONC)という観測網が構成された。最初の観測は、1999年である。基準GPS点では、1999年1月1日より連続観測が行なわれている。
以上の観測の結果を解析した。ITRF97にもとずいて独自のプレ−トモデルをつくり、これを前提として地殻変動を求め、地殻変動の測地モデルを決定し、これと地質モデルとを比較した。 |
3.プレ−トモデルと地殻水平変動 |
プレ−トモデルには、AM0−2,AM1−2,HS−NUVEL1,NNR−NUVEL1Aなどいろいろある。いずれも各観測点の速度の精度は、3mm/年である。プレ−ト境界としてはNUVEL1を採用し、ITRF97にもとずく各プレ−トのオイラー極と回転角速度とを上記のGPS観測結果を用いて新たに決定しなおし、それから各プレ−トに属する中国大陸内のGPS観測点の水平移動速度を決定した。
水平速度ベクトルVpは
Vp=Ω X rp (1)
である。ここで
Ω:点Pでのオイラーベクトル
rp:点Pでの位置ベクトル
である。各プレートの上に二点以上の点があれば、Ωは重み付き平均で決定される。重みは観測の水平速度の分散
(2)
で求められる。
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4.GPS観測の解析 |
解析にあたってはGAMIT(V9.93)/GLOBK(V5.03)によった。GPS観測に利用された受信機は
Leica2000,AvASNR8000,Ashutech12,
Geotracer2200,Geotracer3220,
などである。各キャンペーンごとに各GPS点で四日間観測した。
KOSG,MASP,OHIG,ONSA,WTZR,TIDBの各IGS点を固定して網平均した。 |
5.結果の議論 |
新たに求められた速度場をITRF97VELという。これとNNR−NUVEL1Aとを比較した。AFRC−EURAの組み合わせを除いて両者のオイラーベクトルはよく一致している。
地質学的なブロック境界はMa etal(1989)による。各地質学的ブロックについて測地的な速度場と地質的な速度場を比較すると両者はよく一致している。
□ 中国大陸の地殻水平変動の速度場
Fig.1. Crustal motion with respect to Eurasia as defined by ITRF97VEL |
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