1.はじめに |
ニユージーランドではITRF96に立脚した新しい測地系New Zealand Geodetic Datum 2000(NZGD2000)が1999年8月25日に公開されている。これは進展する社会の要望にこたえ最新の技術によって21世紀の測地系を実現すべく、古いNew Zealand Geodetic Datum 1949(NZGD49)を更新したもので、その設定の手順や結果はニユージーランド土地情報局(Land Information New Zealand,LINZ)のHome Page(http://www.linz.gov.nz)に掲載されている。ニユージーランドの新測地系は、特定の元期における座標値とともにその変化率も与えるなど、極めて斬新な試みに充ちていて今のところ世界のうちでも最も先端的な測地系であろう。
本稿では、文献
Merrin Pearse :Realisation of the New Zealand Geodetic Datum 2000,OSG Technical Report 5,1 June 2000.
によりながら、ニユージーランド測地系2000(NZGD2000)を紹介する。 |
2.ニユージーランド測地系2000(NZGD2000)の特性 |
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まずニユージーランド測地系2000(NZGD2000)のもつ特徴について述べる。 |
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地心測地系である。以前のNZGD49はその中心が地心から200mほどずれていたがこのことが修正されている。 |
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国際測地学協会の決定した最新の楕円体であるGRS1980楕円体を採用している。 |
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新測地系は国際地心測地システム(International Terrestrial Reference System,ITRS)の考えを元期2000.0で国際地心測地系96(International Terrestrial Reference Frame 96,ITRF96)として実現している。ITRF96はWGS84(G873)と数cmしか異ならない。 |
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各測地点の変動速度もITRSに立脚して算出されている。これによりユーザーは任意の元期以外の時点での最新の測地点の位置を算出して利用できる。 |
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NZGD2000の各測地点の座標は新観測によって変えられるものである。 |
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3.GPSデーターの集約 |
1992年に、ニユージーランド測地局(後に土地情報局LINZに併合)はGPS国家網の試験観測を始めた。1993年には30点観測した。これはNZGD2000Gの0および1等点である。0等点は3点(AUCK,CHAT,WGTN)ある。1等点は28点ある。図1にその分布を示す。1994〜1998年の間も観測した。これらの観測では24時間観測を3ケ日続けている。1等点は2〜4等点でうずめられる。2等点は70km間隔、3等点は20km間隔、4等点は1km間隔である。3〜4等点は全国をカバーしているわけではない。
□ NZGD2000網のO〜1等点 |
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4.集約したGPS観測値の整約計算 |
NZGD2000確立のために1996.5年元期のITRF96座標値の計算をおこなうことをキャンベラ大学に委託した。解析はGAMIT/GLOBK/GLORGによる。座標値を計算するうえでIGS点をおおいに利用した。
毎日のGAMIT解では観測点の位置とともに、衛星軌道、地球自転パラメーター、を算出する。これをGLOBKでまとめてひとつのシステムとする。この解をITRF96解にするためにGLORGを使う。これによりスケール、回転、移行の定誤差がなくなる。この計算のさいにIGS点の位置と移動速度の数値を使った。解析の特徴は次のごとくである。
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解析ソフトとしてはGAMIT/GLOBKを使った。 |
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すべての基線の解析は一重差によっている。 |
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対流圏モデルは2時間ごとに設定している。 |
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電離層のモデルは2時間ごとに設定している。 |
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サイクルスリップの検出にCVIEWというソフトを使っている。 |
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各観測ごとに網平均し、座標値のほかに共分散行列をフアイルとして出力している。 |
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高さは潮汐の影響のないシステムとして算出してある。 |
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5.速度モデルの決定 |
地質核科学研究所(Geology and Nuclear Science Institute,GNS)に、GPSデータを使った1997GNS速度モデルを作ることを委託した。解析方法は座標変化プログラムADJCOORDによる(Bibby,1982,Crook,1992)。詳しい報告はBeavan(1998)にある。約30点について1996.5のITRF96の位置と速度場の解をもとめたが、ある点では大きな誤差が出た。NZGD2000の座標値は2000.0元期で与えてある。
@ |
0〜1等点の1996.5元期の座標値を速度場モデルによって2000.0に化成した。95%信頼楕円の軸長は水平0.01m,高さ0.02mである。 |
A |
2〜5等点は0〜1等点を与点として網平均する。SNAP(Crook,1995)による。この際の重量はそれぞれの点のアプリオリな誤差により求める。この誤差を表2に示した。観測のアプリオリ誤差は定数項と距離に依存する項とからなる。 |
観測のアプリオリ誤差
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CONSTANT |
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Line Length Error |
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E mm |
N mm |
U mm |
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E ppm |
N ppm |
U ppm |
1st Order |
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1.2 |
1.2 |
1.5 |
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0.004 |
0.004 |
0.15 |
2st Order |
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1.2 |
1.2 |
1.5 |
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0.4 |
0.4 |
1.5 |
3st Order |
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4 |
4 |
5 |
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1.2 |
1.2 |
5 |
4st Order |
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4 |
4 |
5 |
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4 |
4 |
15 |
5st Order |
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4 |
4 |
5 |
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12 |
12 |
50 |
点数は
2等点 313点
3等点 1339点
4等点 1714点
Beaven(1998)とMorgan・Pearse(1999)の速度場の比較。
95%信頼楕円はBeavenの推定値に付してある。 |
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元期2000.0でのITRF96でのNZGD2000座標値
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5.まとめ |
NZGD2000の0〜1等点の初期座標値を算出し、これより2〜4等点がどのように決定されたかを述べた。座標値の元期は2000.0である。新座標値はLINZのサイトにて見出すことができる。 |