地球が丸いってほんとうですか?

〜 The truth lies within survey 〜

#22 GPSはどうやって地上の位置を決めているのですか。

Q22.

図22-1 GPSは2万kmの高度を周回する人工衛星からの電波を受ける
ことにより、地上の位置を求めるシステム

 

友だちのもっている携帯電話はGPS携帯だそうです。最近よく耳にするGPSというのは、人工衛星を使って人や自動車などの位置がわかる装置のようですが、どのようにして位置を決めているのですか?

A22.

GPSは、Global Positioning System(全地球測位システム)の略で、人工衛星から発射されるマイクロ波と呼ばれる電波を受信することにより、自分の位置を決められるシステムです。
 
1978年から、アメリカ国防総省により打ち上げがはじまったGPS衛星は、1993年に完全運用を開始しました。2004年現在、29機のGPS衛星が、約2万kmの上空を約12時間の周期で地球の周りを周回しています(図22-1)。もともと24機の計画だったのですが、予備のものも含めて、計画よりも多くの衛星が打ち上げられました。
 
この衛星は、セシウム原子時計と呼ばれる非常に正確な時計をそなえています。地上の複数の管制局では、この人工衛星が出す電波を観測することにより、衛星の軌道などを決定します。そして、衛星に関する軌道や時計の情報、地上の管制局からGPS衛星に送られています。衛星では、受け取った自分の位置に関する情報と、自分が持っている時計の時刻の情報を載せた電波を、つねに地球に向けて発射しています。カーナビは、この電波を受信して、自動車の位置を決めているわけです。
 
どのようにしてGPS衛星で地上の位置が求められるのか考えてみましょう。
 
(図22-2)

GPSで地上の位置を求める方式。a:GPS衛星を使って、その衛星から地上に電波が達するのに要する時間(伝搬時間)を測る。b:3個の位置のわかったGPS衛星A、B、Cを使うと、それぞれの衛星から地上受信点までの距離がわかる。3つの球面が交わったところが、受信点ということになる。

いま、GPS衛星と同じように、非常に正確な時計を持った受信機が地上にあるとします。すると、衛星が電波を発射した時刻とそれを受信した時刻の差から、衛星と受信機と間の距離が求められます(図22-2)。人工衛星の位置も電波に載っている情報から分かりますので、3個の衛星からの電波を受信すると、宇宙の3点からの距離が分かることになり、受信機の位置をひとつに決めることができるわけです。
 
しかし、カーナビなどにはこんなに正確な時計がついているわけではありません。みなさんの腕時計と同じ、クォーツ(水晶)の時計がついているだけです。そこで、4番目の衛星からの電波を受信して、時計あわせをします。4つの衛星からの電波を受信することにより、4つの未知量、すなわち位置3成分(緯度・経度・高さ)および受信機の時刻とを決めることができるわけです。
 
このように、アンテナなどから構成されるGPS電波の受信装置と、信号を計算処理できる演算装置とがそなえられれば、比較的に簡単かつ正確に自分の位置を決めることができるので、GPSはいろいろなところに利用されています。もともとは、軍によって、軍艦、戦闘機、ミサイルといった物騒なものの位置を決めるために開発されたものでした。しかし、いまでは車や飛行機や船舶の位置を決める機械として、民間利用が進んでいます。
 
携帯電話とセットにして、自分のいまいる位置を相手に知らせるようにすれば、老人や子どもに持たせて、迷子になった時にそなえることができます。同じ機能が、野生動物の行動の調査などにも利用されています。また、無人ヘリコプターを飛ばして農薬をまくなど、ロボットへの応用も試みられています。さらに、GPSは位置を決めるだけではなく、時刻も正確に決めることができるので、精密時計としても利用されており、各国の時刻を決めている原子時計の相互比較にも利用されています。また、高い時計精度が求められる地震観測にはGPSはなくてはならないものとなっています。
 
このように便利なGPSですが、欠点もあります。
 
ひとつは、人工衛星からの電波を利用しているために、電波が受けることができる場所でなければならないということです。しかも、3次元的な位置を決めるには4つの衛星からの電波を受信する必要があります。地下や室内はもちろんのこと、屋外でも、空が開けていないビルの谷間などでは、電波の受信はむずかしくなります。そこでビルの谷間でも受信できるようにと、人工衛星の軌道を工夫してつねにほぼ真上に衛星が来るように設計された「準天頂衛星」というものも考えられています。
 
もうひとつの欠点は、GPS衛星は、米軍が上げた衛星であるため、米軍の意向によっては使えなくなる可能性があるということです。つまり、この衛星からの電波は、米軍にとっての敵も利用できるため、2000年5月までは、衛星から送られてくる電波の精度をわざと落とすことがなされていました。現在では、そのようなことはなされていませんが、しかし、今後もそのようなことがないとは限りません。そのためGPSに変わる独自のシステムが必要と考え、ロシアはGLONASSという衛星を打ち上げています。また、EUでもGALILEOという独自の衛星の打ち上げを計画しています。日本でも検討はされているようですが、準天頂衛星を除いてGPSに代わる独自の打ち上げを計画するというところまでは行ってないようですね。